歯ぎしり用マウスピース、作るべき?費用・効果・デメリットを歯科医が本音で解説

「朝起きると顎がだるい…」「家族に歯ぎしりを指摘された…」もしかしたら、あなたも無意識のうちに歯や顎に負担をかけているサインかもしれません。

ご安心ください。そのお悩み、歯科医院で作るマウスピースで解決できる可能性があります。

この記事では、年間200症例以上の治療を行う歯科医師が、あなたの「効果あるの?」「費用は?」「面倒じゃない?」という不安と疑問に徹底的に寄り添い、専門用語を避けて正直に解説します。読み終える頃には、あなたがマウスピースを作るべきか、そのための次の一歩が明確になっています。

もしかして私も?放置すると怖い「歯ぎしり」のサインと原因

美咲さん、はじめまして。歯科医師の佐藤です。朝、顎がだるいと、一日がゆううつになりますよね。歯ぎしりのご相談でいらっしゃる方の多くが、美咲さんと同じような不安と疑問を抱えています。大丈夫ですよ。まずは一緒に、一つずつ解決していきましょう。

まず、ご自身の状況を確認してみましょう。以下のような症状に心当たりはありませんか?

  • 朝、目覚めた時に顎やこめかみに疲労感や痛みがある
  • 歯がすり減って短くなった、あるいは欠けたり割れたりしたことがある
  • 肩こりや頭痛が続いている
  • 家族やパートナーから、睡眠中の歯ぎしりを指摘されたことがある

一つでも当てはまるなら、それは「歯ぎしり(専門用語でブラキシズム)」のサインかもしれません。

患者さんから最もよく受ける質問は、「歯ぎしりって、そんなに悪いことなんですか?」というものです。結論から言うと、無意識に行われる歯ぎしりは、食事の時の何倍もの力で、あなたの歯や顎にダメージを与え続ける可能性があります。歯ぎしりを放置すると、歯がすり減るだけでなく、顎の関節に負担がかかり「顎関節症」を引き起こしたり、頭痛や肩こりを悪化させたりするリスクがあります。

そして、歯ぎしり(ブラキシズム)とストレスは、原因と結果の関係にあることが多いのです。特に、美咲さんのように日中、お仕事などで緊張状態が続くと、そのストレスが睡眠中の無意識な食いしばりとして現れやすくなります。

歯科医院のマウスピースで何が変わる?市販品との3つの決定的違い

「マウスピースなら市販のものでも良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私たち専門家は、特別な理由がない限り市販品をお勧めしません。歯科医院で作るオーダーメイドのマウスピースと、市販のマウスピースは、安全性や効果の面で全くの別物だからです。

歯科医院で行う治療は、正確には「スプリント療法」と呼ばれます。このスプリント療法で使うマウスピースは、歯と顎を守るオーダーメイドのクッションのようなものです。市販品との決定的な違いは、主に以下の3点です。

  1. 適合性(フィット感): 歯科医院では、精密に歯型を採って、あなたの噛み合わせに完全に合ったマウスピースを作ります。一方、市販品は自分でお湯を使って形を合わせるタイプが多く、ぴったりフィットさせるのは困難です。
  2. 安全性: 適合が不十分な市販品を使い続けると、噛み合わせがズレてしまい、かえって顎の痛みや頭痛を悪化させる危険性があります。オーダーメイドのマウスピースは、あなたの正常な噛み合わせを維持、あるいは改善するように設計されるため、そのリスクがありません。
  3. 治療効果: オーダーメイドのマウスピースは、歯ぎしりの力を効果的に分散・吸収し、歯や顎、筋肉への負担を確実に軽減します。市販品では、この効果を十分に得ることは難しいでしょう。

【費用・流れ・期間】マウスピース治療の全貌|保険は本当に使える?

ここからは、皆さんが最も気になるであろう費用や治療の流れについて、客観的な事実をお伝えします。

まず費用ですが、「歯ぎしり」の治療を目的とする場合、スプリント療法は健康保険の適用対象となります。診断がつけば、保険が使えるのです。

自己負担が3割の場合、マウスピース製作にかかる費用は、おおよそ5,000円から10,000円程度が目安です。これは、診察料や型取り、製作、調整にかかる費用をすべて含んだ金額です。

次に、治療の具体的な流れと期間です。初診からマウスピースの完成まで、正直に言うと2〜3回の通院が必要になります。

マウスピース治療の標準的な流れ 通院回数 主な内容 所要時間(目安)
1回目 カウンセリング、口腔内診査、レントゲン撮影、歯の型取り 30分〜45分
2回目 完成したマウスピースの装着、噛み合わせの微調整 15分〜30分
3回目以降 定期メンテナンス(数ヶ月に1回程度) 15分程度

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 最初の1週間は、違和感があっても諦めずに装着を続けてみてください。

なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、「最初の違和感に慣れずに自己判断でやめてしまう」のが、マウスピース治療で最も多い失敗パターンだからです。オーダーメイドのマウスピースは非常に薄く作られていますが、それでも最初は異物感があるのが普通です。しかし、ほとんどの方は数日から1週間で慣れます。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。

よくある質問|痛くない?手入れは?歯科医が正直に答えます

最後に、患者さんからよくいただく細かい質問について、正直にお答えします。

Q: 装着して眠れますか?違和感は?
A: はい、ほとんどの方が問題なく眠れています。前述の通り、最初の数日は異物感があるかもしれませんが、すぐに慣れる方が大半です。もし調整後も痛みが続く場合は、遠慮なく歯科医師に相談してください。再調整が可能です。

Q: 毎日のお手入れは面倒ですか?
A: いいえ、とても簡単です。朝起きてマウスピースを外したら、歯ブラシを使って優しく水で洗うだけです。熱いお湯は変形の原因になるので避けてください。週に1〜2回、市販の入れ歯洗浄剤やマウスピース専用の洗浄剤を使うと、より清潔に保てます。

Q: マウスピースはどれくらい持ちますか?(寿命)
A: 使用する素材(ソフトタイプかハードタイプか)や、歯ぎしりの強さによって個人差がありますが、一般的には2〜3年が交換の目安です。定期検診の際に、すり減り具合などをチェックしてもらいましょう。


まとめ:あなたの次の一歩

この記事の要点を振り返ってみましょう。

  • 朝の顎のだるさや歯のすり減りは、放置すると危険な「歯ぎしり」のサインかもしれません。
  • 安全で効果的な治療のためには、市販品ではなく歯科医院でオーダーメイドのマウスピースを作ることが重要です。
  • 歯ぎしり治療であれば健康保険が適用され、費用は1万円以下が目安です。
  • 治療は2〜3回の通院で完了し、毎日のお手入れも簡単です。

もう一人で悩む必要はありません。専門家と一緒に、あなたに合った解決策を見つけましょう。

あなたの健康への第一歩は、まず専門家に相談することから始まります。お近くの歯科医院で「歯ぎしりの相談がしたい」と伝えてみてください。この記事が、あなたの不安を解消し、次の一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

[参考文献リスト]

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